
メディアが本当に取材したいネタとは? 【5/15トークセッションダイジェスト】
千葉県広報研究会は2025年5月15日(木)、ゲストスピーカーを招いた「広報トークセッション」を開催しました。
第4回のゲストスピーカーは、千葉日報社編集局長の平口亜土さん。現役の新聞編集者として、ニュース記事の制作・編集に携わっています。
トークセッションでは、千葉県広報研究会事務局が進行役を務め、メディア事業者の視点から、どのような「ネタ」を取材したいかを伺いました。お話しいただいた内容の一部をダイジェストとして掲載します。
進行役
千葉県広報研究会のトークセッション第4回は「メディアが取材したいネタ」がテーマです。まずは自己紹介をお願いします。
平口さん
私は千葉日報社に1997年に入社し、ずっと編集局でやってきました。経済を中心に地方行政、文化担当などを経験し、近年はデジタル部門にも関わってきました。今年4月から編集局長として編集作業全体を見ています。
進行役
今日はストレートにお伺いしたいのが、「メディアが本当に取材したくなるネタって何か?」ということなんです。実際、どんなネタだったら紙面やニュースサイトで取り上げたくなるんでしょうか?
平口さん
単なる商品PRみたいなものは、なかなか難しいです。報道と広告は別なので。ただ、その情報に社会性やストーリー性、新規性があると、グッと興味が出ますね。
例えば、千葉県で害獣として問題になっている「キョン」の肉をペットフードに活用した取り組みは地域の社会課題とも結びついていて、記事化した意義があったと考えています。
千葉県内の課題に取り組む地元企業の連携という文脈があり、報道記事としての価値がありました。さらに人間ドラマも加わると、より魅力が増します。
進行役
ところで、記者の皆さんはどうやって日々のネタを拾っているんですか?
平口さん
各記者が担当分野を持ち、警察、行政、経済、スポーツなどの情報を記者クラブや関係者とのネットワークから得ています。プレスリリースも大量に届きますが、すべてに目を通すのは難しいので、選別が大事です。
進行役
プレスリリースが大量に届くということは、企業がプレスリリースを出す際も何か一工夫しないと埋もれてしまうということでしょうか?
平口さん
そうだと思います。単なる新商品の紹介ではなく、たとえば「この商品は地域でこういうニーズに応えている」とか、「最近こういうトレンドがある中での取り組み」といった背景や文脈があるとメディア側も取り上げやすいですね。
進行役
メディア側との関係性はどのように作ったら良いと考えますか? 単に「記事にしてください!」とお願いしても、なかなか取り上げてもらうのは難しいと思うのですが。
平口さん
そうですね。顔の見える関係のほうが、記者としても頼りやすいです。ちょっとした相談やヒントも出しやすくなりますし。
進行役
持参してプレスリリースを届ける行為も、意外と無駄じゃないと?
平口さん
ええ、インパクトのあるネタの場合は特に。直接来ていただくことで、記者の記憶に残りやすいです。毎回じゃなくていいんですけど、ここぞというときは効果的です。
進行役
今日のまとめに入りますが、お話を伺う中で印象的だったのは、「記者はPRじゃなく報道記事を書きたい」という点ですね。
平口さん
はい。プレスリリースはきっかけにはなりますが、それだけでは「記事」にするには弱い。そこに取材で得た独自要素や、他社との差別化が加わると、本当に“記者の手で書きたい”と思える記事になります。
進行役
つまり、広報する側も「どうすれば報道価値が生まれるか」という視点を持って、記者とのコミュニケーションを意識するのが大切ですね。
平口さん
そうだと思います。単なる宣伝ではなく、社会とどうつながるかを考えていただければ、報道側も取り上げやすくなります。
進行役
本日はありがとうございました。報道と広報の橋渡しがよりうまくいくヒントになれば嬉しいです。